アドラー心理学では「すべての悩みは人間関係の悩みである」と教えています。
もっとも身近な関係である親子の関係も、人間関係ですから、そこには問題や悩みが生じるケースは多くあると思います。
私は、子供が不登校になったことをきっかけにアドラー心理学を学び始めました。
そして、アドラー心理学を通じ、目の前の問題への対処方法だけでなく、親子の関係をより良いものに変えられる、とても大事なことを学びました。
今回の記事では、アドラー心理学を子育てに活かす中で、私が学んだ3つの大事なことについてご紹介いたします。
目次
アドラー心理学を子育てに活かすために大事なこと
アドラー心理学の根底には「すべての悩みは、対人関係の悩みである」という考え方があります。
ですから、もっとも身近な関係である「親子関係」においても大いに役立つものばかりです。
その中でも、私が、特に大事だと感じることは次の3つです。
親子ともに「承認欲求」にとらわれないこと
承認欲求とは「他者から認められたい、自分を価値ある存在として認めたい」という気持ちです。
アドラーと同様に有名なアメリカの心理学者アブラハム・マズローが提唱した「マズローの欲求5段階説」によれば、承認欲求とは、生理的欲求、安全欲求、社会的欲求の上にくるもので、努力へのモチベーションになるとも言われています。
でも、子育てにおいては弊害が多いようにも感じられます。
例えば、「自分を認めて欲しい」という承認欲求。
「自分は、仕事もしながら家事、子育てもやっているのに認めてもらえない」
「自分は、家族のためにこんなにも頑張っているのに認めてもらえない」
多くの人がこのような感情を持っているのではないでしょうか。
このような感情を抱えたままだと、家族や周囲に対して、常に不満を持ち、ついついイライラしがちになってしまい、子供に接する気持ちの余裕がなくなってしまいます。
同じように、子供が承認欲求にとらわれてしまうことも弊害を生みがちです。
「親や先生から認められたい」
「友達から尊敬を集めたい」
「世の中から凄いと言われたい」
子供が、このような感情を持つ場合、それが行き過ぎてしまうと、常に他者の目線ばかりを気にするようになってしまい、結果的に、行動する意欲が削がれてしまいます。
アドラーは、このような状態を「他者の人生を生きている」としています。
このように親子ともに承認欲求にとらわれてしまってはいけません。
まずは、他人との比較をやめて、自分自身の考えることを大事にしてください。
また、お子さんに接するときは、結果に対し褒めたり叱ったりする「賞罰教育」をやめるように心がけてみましょう。
親子とはいえ「課題の分離」を徹底すること
次に大事なことは、親子とはいえ「課題の分離」を徹底することです。
課題の分離とは「これは誰の課題なのか」という視点から、自分の課題と他人の課題とを分離するものでした。
多くの方が、子供に「勉強しなさい」と怒った経験を持っていると思います。
でも、勉強するのは誰の課題でしょうか。
これは言うまでもなく子供の課題です。親ができることは、子供が何をしているか知ったうえで見守ることだけです。
勉強について言えば、それが本人の課題であることを伝え、もしも本人が勉強したいと思った時にはいつでも援助をする用意があることを伝える、でも子供の課題には土足で踏み込まない。
頼まれもしないことにあれこれ口出しすると、人は必ず反発します。
子供が引きこもってしまった場合はどうでしょうか。
親ですから、当然、子供とその将来が心配になり、積極的に介入しようと考えがちです。
でも、このように親が積極的に介入するケースは、問題の根本的な解決にならないこともあります。
このような時、アドラー心理学では、以下のように考え方を整理することを教えています。
- 引きこもっていることは子供の課題であると整理する。
- 引きこもっている状況について介入しようとせず、過度に注目するのをやめる。
- 困ったときにはつでも援助する用意があるとメッセージを送っておく。
こうすることで、子供が親の変化を察知し、この問題を「自分の課題」として考えざるを得ない状況になり、状況を脱するために援助を求めてきたり、自力でなんとかしようと努力するようになるのです。
もちろん、親子ですから、心配する気持ちが先にたち、ついつい介入しがちです。
そんな時は「親」という漢字の成り立ちを思い出してみましょう。
「親」という字は、「木の上に立って見る」と書きますね。昔の人は、現代を生きる私たち以上に、親子における課題の分離の必要性に気がついていたのかもしれません。
親子だからこそ「信じる勇気」を持つこと
大事なことの3つめは、「信じる勇気」を持つことです。
少しでもアドラー心理学を学んだあなたであれば、「嫌われる勇気」の間違いではないかと思うかもしれません。
でも、これは間違いでもなんでもありません。
先ほどお伝えした通り、親子とはいえ「課題の分離」を徹底する必要があります。
でも、子供にとっては、自分の課題と気づいて援助を求めてきたり、自力でなんとかしようとするのに、とても時間がかかる場合があります。
その間、親であるあなたは、他人と比べてしまったり、変わらない状況に待ちきれずに、直接的に介入したい気持ちにとらわれてしまうと思います。
でも、それでは状況は変わりません。
こんなときに大事なことが「信じる勇気」を持つことです。
子供を信じて子供が自分の課題に勇気を持って対峙できるように待つ。
親子だからこそ介入したくなってしまう気持ちを抑え信じて待つ。
これこそが、私がアドラー心理学を子育でに活かす中で学んだ、もっとも大切なことになります。
まとめ
今回の記事では、アドラー心理学を子育てに活かすために、私が学んだことについてお伝えしました。まとめますと以下の通りです。
- 親子ともに「承認欲求」にとらわれないこと。承認欲求にとらわれることを避けるために、他者との比較をやめ、子供に対しては賞罰的なアプローチをやめること。
- 親子とはいえ「課題の分離」を徹底すること。ついつい介入したくなる時は、「親」という漢字の成り立ちを思い出してみること。
- 親子だからこそ「信じる勇気」を持つこと。子供が、自分の課題を認識し解決に動くまでに時間がかかるケースもあるが、信じて待つこと。信じる勇気を持つことが最も大事であること。
言うまでもなく、子育てに絶対の正解はなく、あなたの置かれた状況や、お子さんの状態、あるいは、その時々の社会的な事情により、答えは千差万別です。
でも、あなたが、アドラー心理学を学ぶことで、対人関係に必要な原理原則を手にすることができ、その時々の状況にもっとも相応しい行動を取れるようになることは間違いありません。
ぜひ、アドラー心理学を学び、あなたなりの大事なことを見つけだしてください。